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高松高等裁判所 昭和45年(ラ)2号 決定

抗告人 岩瀬次弘

〈ほか三名〉

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

本件抗告の趣旨および理由は別紙のとおりである。

これに対し、当裁判所は次のとおり判断する。

申立の理由の三の(一)の点について。

本件不動産の時価がその主張のように高価であることを認めるに足る資料は何ら存在しない。記録によると、原裁判所は鑑定人をして本件不動産を評価させた上最低競売価額を定めこれを競売期日の公告に記載していることが明らかであって何ら違法の点はない。

同(二)の点について。

本件不動産が農地であることは所論のとおりであるが、本件競買人は物件所有者たる中山萬太本人であって所有権移転を伴わない場合であるから、競買適格証明書を提出させないで競買申出を許した扱いに何ら不当の点はない。

同(三)の点について。

所論のような事情を窺うべき資料は全く存在せず、記録中の不動産競売調書によれば、中山萬太本人が出頭して競買申出をした事実が明らかである。

同(四)および(五)について。

所論は、徳島市農業委員会が特別の事情がなかったのにもかかわらず、福本外二名の者の競買適格証明願を所轄県知事に進達することを競売期日まで保留したもののように前提して立論するが、そのような前提事実を認めるべき資料は何ら存在しないところである。また、或る者に対する競買適格証明書の交付の許否を行政庁で決定するまでの間、裁判所が競売期日を開いてその手続を実施することが許されぬものでないことはいうまでもなく、論旨は理由がない。

その他一件記録を検討するも、本件競落を不許可とすべき理由は認められないから、本件抗告はこれを棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 橘盛行 裁判官 今中道信 藤原弘道)

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